非常に暗く沈んだ気分にいる。
現在この本の 3分の2あたりだが この本が提起する問題そのものが いま日本が抱えている問題、いや僕自身の存在とも
見えない糸でしっかり結ばれていること を感じて一層気分が落ち込んでくるのだ。
この本が刊行されたのが今からちょうど 10年前の2002年、テーマは解説者の言葉を借りると
「商品として売買される貧しいアジアの子供たちを題材にした小説である。」・・・である。
ボクはこれまでどんな映画を見ても 眼をふせいだ事がない人間だが この小説に書かれている世界には 正直関わりたく
ない・・・と思うが これまで享受してきた豊かさの裏には 確かにこういう現実が あるのだと思っていたことが
この本で証明され、気がついたら キューブリックの映画「時計仕掛けのオレンジ」の主人公のように椅子に固定され
眼をこじ開けられて この本を「読む刑」に磔にされたような気分だ。
小説に登場する バンコクの社会福祉センターで働く日本女性が 新聞記者にある協力を依頼する下りのセリフ:
「これは一つの問題ではありません。世界が直面している戦争、難民、差別、虐殺、途方もない犯罪、その他、
あらゆる問題が集約されています。欧米や日本では、いったいどこにそんな問題があるのかと思っているでしようけど
それは見ようとしないからです。見ようとしない者には存在しないも同然なのです。だからこそ、事実と真実を暴露し
世界が陥っている巨大な矛盾は、やがて自分たちの生活をも脅かすことになりかねないことを伝えるのが
マスコミの義務ではないでしょうか」
